β遮断薬はβ受容体に結合する事でβ受容体を遮断し血圧や心拍数などを抑える薬です。β受容体には3つのサブタイプ(β1受容体、β2受容体、β3受容体)があることが知られており、それぞれの体内で分布している箇所や役割が異なります。この記事では高血圧に関わるβ2受容体をメインに解説しています。
目次
β受容体のサブタイプと分布箇所
β受容体には上述の通り3種類存在していることがわかっています。それぞれのサブタイプと主な存在箇所は以下の通りです。
臓器 | サブタイプ | 刺激作用 | |
心臓 | 洞結節 | β1 | 脈拍数の増加 |
房室結節 | β1 | 伝導性の亢進 | |
心房筋 | β1 | 収縮力の増強 | |
心室筋 | β1 | 収縮力の増強 | |
血管 | β2 | 弛緩 | |
気管支 | β2 | 弛緩 | |
子宮 | β2 | 弛緩 | |
骨格筋 | β2 | 振戦、K輸送 | |
腎(傍糸球体細胞) | β2 | レニン分泌 | |
膵 | β2 | インスリン分泌 | |
腸管 | β2 | 弛緩 | |
脂肪 | β2 | 脂肪分解 | |
β3 | 脂肪分解、熱産生 | ||
消化器官 | 平滑筋 | β3 | 弛緩 |
β遮断薬 廣谷信一ら 心臓. 2000,32(2) 81-86を参考に一部改変
β遮断薬の作用機序
β遮断薬はβ受容体に結合することにより、脈拍数を抑えます(β1)。それにより、心臓から送り出される血液量を低下させ、血管内血液量を下げ、血圧を低下させます。
β遮断薬の副作用
β遮断薬の副作用には以下の副作用等があります。
精神神経系症状 | めまい、頭痛、不眠、眠気など |
消化器症状 | 吐き気、食欲不振、便秘など |
循環器症状 | 心機能低下、低血圧、洞機能不全、房室ブロックなど |
ステム
β遮断薬のステムにはアリールアミノアルコール構造を持つアドレナリンβ受容体拮抗薬を示す-alolとアリールオキシアミノアルコール構造を持つアドレナリンβ受容体拮抗薬を示す-ololがあります。
構造式
各成分の構造式は次のようになっています(英名の太字+下線の部分はステムの部分です)。
β遮断薬(β1非選択性、ISAなし)
ナドロール Nadolol (先発医薬品名:ナディック) |
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ニプラジロール Nipradilol (先発医薬品名:ハイパジール) |
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プロプラノロール塩酸塩 Propranolol Hydrochloride (先発医薬品名:インデラル) |
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β遮断薬(β1非選択性、ISAあり)
カルテオロール塩酸塩 Carteolol Hydrochloride (先発医薬品名:ミケラン) |
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ピンドロール Pindolol (先発医薬品名:カルビスケン) |
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β遮断薬(β1選択性、ISAなし)
アテノロール Atenolol (先発医薬品名:テノーミン) |
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ビソプロロールフマル酸塩 Bisoprolol Fumarate (先発医薬品名:メインテート) |
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ベキタソロール塩酸塩 Betaxolol Hydrochloride (先発医薬品名:ケルロング) |
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メトプロロール酒石酸塩 Metoprolol Tartrate (先発医薬品名:ロプレソール、セロケン) |
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β遮断薬(β1選択性、ISAあり)
アセブトロール塩酸塩 Acebutolol Hydrochloride (先発医薬品名::アセタノール) |
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セリプロロール塩酸塩 Celiprolol Hydrochloride (先発医薬品名:セレクト―ル) |
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αβ遮断薬
アモスラロール塩酸塩 Amosulalol Hydrochloride (先発医薬品名:ローガン) |
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アロチノロール塩酸塩 Arotinolol Hydrochloride |
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カルベジロール Carvedilol (先発医薬品名:アーチスト) |
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ベバントロール塩酸塩 Bevantolol Hydrochloride (先発医薬品名:カルバン) |
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ラベタロール塩酸塩 Labetalol Hydrochloride (先発医薬品名:トランデート) |
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