カルシウム拮抗薬は高血圧症の治療で使われる薬です。本記事ではカルシウム拮抗薬の作用機序について詳しく解説し、またグレープフルーツジュースとの関係についても触れていきます。カルシウム拮抗薬は高血圧症の第一選択薬です。カルシウム拮抗薬と同じく、高血圧症の第一選択薬は他にアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬があります。
それぞれの解説記事のリンクを下記です。
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カルシウム拮抗薬は英語で?
カルシウム拮抗薬は英語でCalcium channel blockersと書き、略してCCBsと書くこともあります。カルシウム拮抗薬は下記で作用機序を記載していますが、カルシウムチャネルに結合して作用を有するので、そのように書かれます。
カルシウム拮抗薬の作用機序
カルシウム拮抗薬は細胞膜上のCaチャネルに結合し、細胞内へのCa2+イオン流入を阻害します。血管平滑筋へのCa2+流入を阻害する事により、血管平滑筋を弛緩(収縮抑制)します。末梢の血管抵抗を減少させることにより、降圧作用を示します。
Caチャネルについて書き始めると長くなったので、別記事にまとめました。
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カルシウム拮抗薬の強さは?比較一覧表など
カルシウム拮抗薬のそれぞれの強さ(降圧作用)を網羅的に比較したエビデンスのあるものは今のところありません。それぞれの半減期や結合するカルシウムチャネルのタイプが異なるので、それぞれの患者さんに合わせて処方することになります。Caチャネルのタイプとそれぞれに結合するカルシウム拮抗薬の一覧は以下の通りです。
カルシウムチャネルの種類と特徴
低電位活動型 | 高電位活動型 | ||
チャネルタイプ | T型 | L型 | N型 |
活性化電位 | Low | High | High |
不活性化電位 | Low | High | High |
不活性化電位 | Rapid | Slow | Rapid |
主な局在部位 | 中枢・末梢神経・心臓・血管平滑筋、副腎 | 中枢・末梢神経骨格筋・心筋・血管平滑筋 | 中枢・末梢神経 |
機能 | 収縮・心臓ペースメーカー | 心筋・血管収縮・骨格筋収縮・腺分泌 | 中枢・末梢神経でのシナプス伝達 |
Ca拮抗薬―T型、L型、N型チャネル抑制薬(月刊心臓 32(6):2000)より作図
標的臓器 | T型 | L型 | N型 |
心臓 | 心拍低下 | 収縮力低下 | 心拍数低下 |
交感神経 | 脈拍数低下 | 脈拍数増加 | 脈拍数低下 |
腎臓 | 輸入細動脈拡張 輸出細動脈拡張 糸球体内圧低下 | 輸入細動脈拡張 糸球体内圧上昇 | 輸入細動脈拡張 輸出細動脈拡張 糸球体内圧低下 |
副腎 | アルドステロン抑制 | アルドステロン抑制 |
Ca拮抗薬と抑制するカルシウムチャネルタイプ
L型 | T型 | N型 | |
アゼルニジピン | + | + | - |
アムロジピン | + | - | ? |
アラニジピン | + | - | - |
エホニジピン | + | + | - |
シルニジピン | + | - | + |
バルニジピン | + | - | - |
フェロジピン | + | - | - |
ベニジピン | + | + | + |
ニカルジピン | + | - | - |
ニソルジピン | + | - | - |
ニトレンジピン | + | - | - |
ニフェジピン | + | - | - |
ニルバジピン | + | + | - |
マニジピン | + | + | - |
ジルチアゼム | + | - | - |
カルシウム拮抗薬の副作用
カルシウム拮抗薬の副作用には顔のほてり、むくみ、頭痛、動悸、便秘などがあります。
カルシウム拮抗薬とグレープフルーツジュース
カルシウム拮抗薬を服薬している期間にグレープフルーツジュースを飲むと薬の効果が強く出たり、副作用が出たりします。これは、カルシウム拮抗薬とグレープフルーツジュースに含まれるフラノクマリン誘導体が同じ酵素で代謝されることによります。それぞれCYP3A4という酵素で代謝されるのですが、代謝酵素には限りがあるので、代謝できる量にも限界があります。
その為、カルシウム拮抗薬を服薬している期間にグレープフルーツジュースを飲むと、カルシウム拮抗薬の代謝される量が減り、体内のカルシウム拮抗薬濃度が上がり、結果として薬の作用が強く出たり、濃度が高くなり過ぎて副作用がでたりします。
ステム
カルシウム拮抗薬はその構造によりジヒドロピリジン系と非ジヒドロピリジン系に分けられます。ステムはジヒドロピリジン系Ca2+チャネル拮抗薬を示す-dipine、ジルチアゼム系のCa2+チャネル拮抗薬を示す-tiazemがあります。
構造式
各成分の構造式は次のようになっています(英名の太字+下線の部分はステムの部分です)。
〇ジヒドロピリジン系Ca2+チャネル拮抗薬
アゼルニジピン Azelnidipine (先発医薬品名:カルブロック) |
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アムロジピンベシル酸塩 Amlodipine Besilate (先発医薬品名:ノルバスク、アムロジン) |
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アラニジピン Aranidipine (先発医薬品名:サプレスタ) |
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エホニジピン塩酸塩エタノール付加物 Efonidipine Hydrochloride Ethanolate (先発医薬品名:ランデル) |
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シルニジピン Cilnidipine (先発医薬品名:アテレック) |
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ニカルジピン塩酸塩 Nicardipine Hydrochloride (先発医薬品名:ペルジピン) |
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ニソルジピン Nisoldipine (先発医薬品名:バイミカード) |
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ニトレンジピン Nitrendipine (先発医薬品名:バイロテンシン) |
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ニフェジピン Nifedipine (先発医薬品名:アダラート、セパミット) |
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ニルバジピン Nilvadipine (先発医薬品名:ニバジール) |
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バルニジピン塩酸塩 Barnidipine Hydrochloride (先発医薬品名:ヒポカ) |
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フェロジピン Felodipine (先発医薬品名:スプレンジール、ムノバール) |
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ベニジピン塩酸塩 Benidipine Hydrochloride (先発医薬品名:コニール) |
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マニジピン塩酸塩 Manidipine Hydrochloride (先発医薬品名:カルスロット) |
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〇非ジヒドロピリジン系(ジルチアゼム系)
ジルチアゼム塩酸塩 Diltiazem Hydrochloride (先発医薬品名:ヘルベッサー) |
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参考
・高血圧治療ガイドライン2019(日本高血圧学会)
・Ca拮抗薬―T型、L型、N型チャネル抑制薬(月刊心臓Vol.32 No.6(2000))
・日大医誌 73(1):12-13(2014)
・徳山医師会病院 441(2021)
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