利尿薬は高血圧症や心不全などの治療薬として使われます。体内の余分な塩分や水分を体外へ排出することにより、体内の水分量が減り、1分間に心臓が送り出す血液量(心拍出量)が減り、血圧が下がります。利尿薬と一言で言っても、その種類は様々ありますので、その一覧と使い分け、副作用などについて解説しています。
利尿薬の種類と使い分け・作用機序
利尿薬には大きく分けて、①サイアザイド系利尿薬、②ループ利尿薬、③カリウム保持性利尿薬、④バソプレシン受容体阻害薬があります。降圧薬としては一般的にはサイアザイド系利尿薬が使用されます。以下に各種利尿薬の詳細と使い分けについて記述します。
サイアザイド系利尿薬
上述の通り、降圧薬として一般的に使われます。遠位尿細管でのNa+-Cl–共輸送体を阻害する事でナトリウムの再吸収を抑制し、循環血液量を減少させ、長期的には末梢血管抵抗を低下させる事で降圧作用を示します。
ループ利尿薬
ループ利尿薬は高度腎機能低下・末梢腎不全患者で、まずは使用される利尿薬です。ヘンレループの上行脚にて尿細管管腔側のNa+-K+-Cl–共輸送体を阻害する事で、Na+イオンと水の再吸収を抑制、利尿効果を発揮し、降圧作用を示します。サイアザイド系利尿薬と併用することにより強い利尿効果が得られることもあります。
カリウム保持性利尿薬
カリウム保持性利尿薬は腎臓の遠位尿細管などに作用して、カリウムの喪失なくナトリウム排泄を促進し降圧作用を示します。低レニン性高血圧に効果が期待されます。
バソプレシン受容体阻害薬
利尿薬のため、この記事にて記載しておりますが高血圧治療薬としては日本では承認されておりません。バソプレシン受容体阻害薬は集合管にてバソプレシンV2受容体に拮抗し、水の再吸収を阻害する事により選択的に水を排泄し、電解質排泄の増加を伴わない利尿作用を示します。心不全などの治療に使われます。
ここまでをまとめると下図のようになります。
サムスカOD錠インタビューフォームより
副作用
利尿薬の副作用には、以下のような副作用などがあります。
電解質異常 | 低カリウム血症、低ナトリウム血症など |
消化器 | 吐き気、食欲不振、下痢 |
精神神経系 | めまい、耳鳴り、頭痛 |
ステム
ステムはそれぞれの種類の利尿薬で以下が該当します。
種類 | ステム |
サイアザイド(類似)系利尿薬 | -pamide(スルファモイル安息香酸アミド系利尿薬) -thiazide(クロロチアジド系利尿薬) |
ループ利尿薬 | -semide(フロセミド系利尿薬) -etanide(プレタニド系利尿薬) |
カリウム保持性利尿薬(抗アルドステロン薬) | -renone(アルドステロン拮抗作用を有するスピロノラクトン誘導体) |
構造式
各成分の構造式は次のようになっています(英名の太字+下線の部分はステムの部分です)
サイアザイド(類似)系利尿薬)
インダパミド Indapamide (先発医薬品名:テナキシル、ナトリックス) |
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トリクロルメチアジド Trichlormethiazide (先発医薬品名:フルイトラン) |
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トリパミド Tripamide (先発医薬品名:ノルモナール) |
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ベンチルヒドロクロロチアジド Benzylhydrochlorothiazide (先発医薬品名:ベハイド) |
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メフルシド Mefruside (先発医薬品名:バイカロン) |
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ループ利尿薬
アゾセミド Azosemide (先発医薬品名:ダイアート) |
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トラセミド Torasemide (先発医薬品名:ルプラック) |
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フロセミド Furosemide (先発医薬品名:ラシックス、オイテンシン) |
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ブメタニド Bumetanide (先発医薬品名:ルネトロン) |
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カリウム保持性利尿薬(抗アルドステロン薬)
カンレノ酸カリウム Potassium Canrenoate (先発医薬品名:ソルダクトン) |
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スピロノラクトン Spironolactone (先発医薬品名:アルダクトン) |
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トリアムテレン Triamterene (先発医薬品名:トリテレン) |
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