カルシウムチャネルは細胞膜上に存在する細胞膜貫通型タンパク質です。ここでは電位依存性カルシウムチャネル(Voltage-dependent calcium channels:VDCC)について記事にしています。
カルシウムチャネルの種類は6種類
カルシウムチャネルはその電気生理学的、薬理学的性質の違いからT、L、N、P、Q、R型の6種類がある事が分かっています。下図のα1、α2、β、γ、δはカルシウムイオンチャネルを構成するタンパク質で、タンパク質はアミノ酸から構成されていますが、そのアミノ酸が少し異なる事でカルシウムチャネルの仲間だけど、それぞれちょっと性質が違うカルシウムイオンチャネルができます。
▼関連記事:人体を構成するアミノ酸20種類とその構造、略称
Kajol Shah et al. Cells 11(6) ,943(2022)より引用
カルシウムイオンチャネルの一覧
上記6種類のカルシウムイオンチャネルですが、どの細胞にもまんべんなく存在している訳ではありません。その種類によって存在している場所が異なります。下表にて、それぞれの特徴と存在場所を示します。人間の体はそれぞれの発現場所をきちんと制御しているので、すごいですよね。
低電位活性型 | 高 電 位 活 性 型 | |||||
T型 | L型 | N型 | P型 | Q型 | R型 | |
活性化電位 | Low | H i g h | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
不活化電位 | Low | H i g h | ||||
不活化電位 | Rapid | Slow | Rapid | Slow | Intermediate | |
局在 | 中枢・末梢神経・ 心臓・血管平滑筋 | 中枢・末梢神経骨格筋・ 心臓・血管・平滑筋 | 中枢・末梢神経 | 神経 | ||
機能 | 細胞分化・増殖・ 心臓ペースメーカー | 心筋・血管収縮・ 骨格筋収縮・腺分泌 | 中枢・末梢神経での シナプス伝達 | シナプス伝達 | 神経伝達 | |
Ca拮抗薬 | - | ニフェジピン、ニカルジピン、 ジルチアゼム、ベラパミル | - | - | - | - |
- | シルニジピン、アムロジピン | - | - | - |
血管平滑筋が収縮する機構
カルシウムチャネルによりCa2+イオンが細胞内に流入すると血管平滑筋などの筋肉が収縮します。
それは次の機構により収縮します。
Step1:Ca2+イオンの細胞内への流入
ノルアドレナリンなどの物質が平滑筋細胞の受容体に結合するとCa2+チャネルが開き、Ca2+が流入します。
Step2:小胞体からのCa2+イオンの放出
小胞体からCa2+イオンが放出されます。
Step:3:カルモジュリンとの複合体形成
細胞外から流入したCa2+イオンと細胞内の小胞体から放出されたCa2+イオンがカルモジュリンと複合体を形成してCa2+-カルモジュリン複合体を形成します。
Step4:ミオシン軽鎖キナーゼの活性化
Ca2+-カルモジュリン複合体はミオシン軽鎖キナーゼを活性化します。
Step5:ミオシンのリン酸化
活性化されたミオシン軽鎖キナーゼはミオシンをリン酸化して、アクチンと結合できるようになります。
Final Step:筋収縮
リン酸化されたミオシンはアクチンと結合できるようになり、筋収縮します。平滑筋の筋細胞はアクチンとミオシンというタンパク質を使って筋収縮します。
ここまでの一連の流れをまとめると下表のようになります。

参考
・Calcium Channels in the Heart: Disease States and Drugs(Kajol Shah et al. Cells 11(6) ,943(2022))
・Ca拮抗薬―T型、L型、N型チャネル抑制薬(北村憲司ら 月刊心臓Vol.32 No.6(2000))
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