SNRIはSelective Norepinephrine Reuptake Inhibitors(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)の頭文字をとったものになります。読み方は「えすえぬあーるあい」と読みます。SSRIに続く、次世代の抗うつ薬として開発されました。
SNRIの作用機序
SSRIはモノアミン仮説に基づいて開発された薬です。
モノアミン仮説では、強いストレスが継続して負荷されることにより、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンなどのモノアミン濃度が低下し、うつ病を発症すると考えられています。
セロトニントランスポーターを選択的に阻害しますが、SNRIはセロトニントランスポーターとノルアドレナリントランスポーターを選択的に阻害する事により、これらの神経伝達物質の濃度を増加させて、抗うつ作用を示します。
第三世代抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:Selective
Serotonin Reuptake
Inhibitors)はセロトニントランスポーターを選択的に阻害しますが、SNRIはセロトニントランスポーターとノルアドレナリントランスポーターを選択的に阻害する事により、再取り込みを阻害し、シナプス間隙でのこれらの神経伝達物質の濃度を増加させて、抗うつ作用を示すと考えられています。
モノアミン仮説については詳しくは以下の記事を参照ください。神経新生仮説などについても記載しています。(記事の途中へリンクしています)
▼関連記事:うつ病とは?モノアミン仮説、海馬神経新生仮説など発症経過を図説|うつ病発症までの脳内の変化(モノアミン仮説)
抗うつ作用を示す作用機序は三環系、四環系抗うつ薬と似ていますが、他の受容体に対する作用がほとんどなく、副作用の軽減がされています。軽症・中等症の患者への第一選択薬として用いられています。
▼関連記事:第一世代抗うつ薬とは?三環系抗うつ薬の作用機序と副作用・構造式など
▼関連記事:第二世代抗うつ薬とは?四環系抗うつ薬の作用機序・副作用・構造式など
SNRIの1つであるデュロキセチン塩酸塩は糖尿病性神経障害、線維筋痛症、慢性腰痛症、変形性関節症に伴う疼痛にも適応があります。
SNRIの副作用
上述の通り、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬と比較すると副作用は少ないです。ただ、以下のような副作用などが報告されています。SSRIではない副作用として、ノルアドレナリン上昇による循環器症状などもあります。
副作用 | |
消化器症状 | 吐き気、嘔吐、便秘、口渇、腹部膨満感など |
精神神経系症状 | 眠気、めまい、ふらつき、頭痛、不随意運動など |
循環器症状 | 動悸、頻脈、血圧上昇など |
泌尿器症状 | 排尿阻害、尿閉など |
SNRI使用時の注意点
SNRI全般の注意点ではありませんが、各薬剤によってそれぞれ注意点があります。
デュロキセチン塩酸塩の注意点
高度の肝機能障害患者又は高度の腎機能障害患者では禁忌とされています。海外での薬物動態試験結果より、どちらの患者も血漿中濃度が上昇するとされています。
ベンラファキシン塩酸塩の注意点
①重度の肝機能障害患者と②重度の腎機能障害患者又は透析中の患者は禁忌とされています。①は該当患者で臨床試験を実施していないことから、②は海外臨床試験で本剤のクリアランスの低下とそれに伴う血漿中濃度上昇が認められたこと、透析でほとんど除去されないことが理由とされています。
ミルナシプラン塩酸塩の注意点
前立腺疾患等合併例では尿閉が起きることあります。これは投与によりノルアドレナリンが増加し、膀胱排尿金の弛緩及び膀胱括約筋の収縮により排尿を止める方向に作用する為です。
SNRIの一覧と構造式
各成分の構造式は次のようになっています。
デュロキセチン塩酸塩 Duloxetine Hydrochloride (先発医薬品名:サインバルタ) |
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ベンラファキシン塩酸塩 Venlafaxine Hydrochloride (先発医薬品名:イフェクサー) |
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ミルナシプラン塩酸塩 Milnacipran Hydrochloride (先発医薬品名:トレドミン) |
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参考
サインバルタ|インタビューフォーム
イフェクサー|インタビューフォーム
トレドミン|インタビューフォーム
BPSDに対応する向精神病薬ガイドライン
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