抗精神病薬と聞くと、精神病にならなんでも効きそうな気がしますが、違います。実際は統合失調症と呼ばれる病気の症状を抑えるために処方されます。
統合失調症って?
統合失調症は100人に1人の割合で発症すると言われている病気です。ふだんないものがある“陽性症状”とふだんあったものがなくなる“陰性症状”の2つの症状があります。
陽性症状
陽性症状では、妄想や幻覚(主に幻聴の幻覚が多い)などがあります。妄想では、誰かに噂されている錯覚に陥ったり、誰かに悪口を言われているように思いこんだりします。また、自分の心の中が悟られていると思い込んだりします。
幻聴では実際に悪口や自分の噂をされているのが耳から聞こえるように感じます。陽性症状の出ている時はそれが実際に起こっていることと感じますし、実在している声と感じるので、幻聴と会話してしまうこともあります。
幻視では自分の命が狙われているようなシチュエーションが見えてしまうことがあります。
急性期などの状況で患者さん自身が「これは幻聴だ、幻視だ」と認識するのは難しいとされています。その為、本人は現実と思い行動をしているので、周りの人から奇怪な行動をとっていると思われる事もあります。重い症状では24時間幻聴が聞こえる場合もあり、患者さんの精神的負担も大きいものになります。
陰性症状
病気を発症した急性期に薬などを投薬し、治療が進むと認識されることが多くなる症状です。症状としては、無気力や感情の平板化などがあります。周りの人から感情がなくなったように感じ、とても心配になりますが、治療が進んでいる事の証拠ですので、根気強く付き合う事が大切です。
引用:陽性症状と陰性症状のグラフ(国立国際医療研究センター病院)
精神分裂病
1937年から「統合失調症」は「精神分裂病」と呼ばれていました。しかし、2002年8月に日本精神神経学会が呼称変更を決定し、同年8月に厚生労働省は精神保健福祉法に関わる公的文書や診療報酬のレセプト病名に「統合失調症」を使用することを認め、同年8月に各都道府県・政令都市にその旨を通知するまで65年間、「精神分裂病」という呼称が使われていました。
変更の経緯は全国精神障害者家族連合会が
「精神が分裂する病気」というのはあまりに人格否定的であって本人にも告げにくい、変えて欲しい
引用:日本精神神経学会HPより
と日本精神神経学会にその変更を要望したのが契機となりました。
抗精神病薬の種類
抗精神病薬には、大きく分けて定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬があります。薬の誕生は、先に定型抗精神病薬が誕生し、その後非定型抗精神病薬が誕生しました。両社の違いは以下のようになります。
定型抗精神病薬
主に陽性症状を軽減する。錐体外路症状や高プロラクチン血症などの副作用が発現させる可能性がある。フェノチアジン系、ブチロフェノン系、ベンザミド系、イミノジベンジル系などがあります。
非定型抗精神病薬
陽性症状を軽減するだけでなく、陰性症状も和らげる。セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)、ドパミン受容体部分作動薬(DPA)、セロトニン・ドパミンアクティビティモジュレーター(SDMA)などがあります。
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