てんかんとは、脳の神経細胞が異常な放電を起こすことで、意識障害やけいれんを引き起こす病気です。てんかんは、年齢や性別、原因、症状などによってさまざまなタイプがあります。薬物療法は、てんかんの治療において最も一般的な方法の1つであり、効果的な薬剤を使用することで、症状の制御や発作の予防が可能です。この記事では、てんかんの治療に使用される薬について紹介します。
てんかんの他の記事は以下に記しています。
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てんかんの治療に使用される薬
てんかんの治療に使用される薬には、以下のようなものがあります。
バルプロ酸(バルプロ酸ナトリウム)
バルプロ酸は、てんかんの発作を制御するためによく使用される薬剤の1つです。この薬の作用機序は確立されていませんが、神経伝達物質へ作用し興奮性の伝達を抑制することが有力な説とされています。バルプロ酸は様々なタイプのてんかん発作に使用されており、広く使用されています。ただ、妊娠初期に投与された人の出産時に奇形児を出産する割合が多かったとの疫学調査報告もあり、治療上やむを得ない場合を除き投与しない事とされています。
ラモトリギン
ラモトリギンは、てんかんの治療に使用される抗てんかん薬の1つです。この薬はグルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の遊離を抑制することにより、発作の予防に効果があります。海外ではラモトリギンのみの薬物療法(単剤療法)も認められていますが、日本では、他の薬と一緒に服用すること(併用療法)のみ認められていました。その後、2014年(部分発作(二次性全般化発作含む)、強直間代発作)、2015年(定型欠神発作)に日本でも単剤療法が認められました。
レベチラセタム
レベチラセタムは、てんかんの治療に使用される新しい薬剤の1つです。この薬は他の抗てんかん薬とは異なる作用機序であり、レベチラセタムが神経終末のシナプス小胞蛋白2A(SV2A)と結合することで発作を抑制します。また、神経細胞間の過剰な同期化の抑制も認められており、これも発作抑制作用に関わっていると考えられています。
カルバマゼピン
カルバマゼピンは、てんかんの治療に使用される古い薬剤の1つです。この薬は神経細胞の電位依存性ナトリウムチャネルの活動を制限し、過剰な興奮を抑えることにより発作を抑えると考えられています。カルバマゼピンは、てんかんだけでなく、神経痛やうつ病などの治療にも使用されています。
フェニトイン
フェニトインは、てんかんの治療に使用される古い薬剤の1つです。この薬は、大脳内で過剰興奮が起こった際に、その興奮が広がるのを阻止することにより、発作を抑制すると考えられています。
これらの薬は、てんかんの治療において一般的に使用される薬剤の一部です。各薬剤には、特有の副作用や禁忌がありますので、医師の指示に従って適切な薬剤を選択する必要があります。肝機能に障害を持っている患者さんは悪化するおそれがあります。
抗てんかん薬のステムと構造式
てんかんで使われる薬剤のステムと構造式の一覧は以下のようになっています。上述しなかった薬剤も一覧に掲載しています。
抗てんかん薬のステム
抗てんかん薬は色々な種類があるので、ステムも様々です。下表にまとめています。
種類 | 分類 | ステム |
カルバマゼピン | 三環系抗うつ薬 | -pine |
レベチラセタム | ピラセタム系脳機能改善薬 | -racetam |
バルビツール酸系 | バルビツール酸系催眠薬 | (-)barb- |
フェニトイン系 | ヒダントイン系抗けいれん薬 | -toin |
構造式
各成分の構造式は次のようになっています(英名の太字+下線の部分はステムの部分です)。
バルプロ酸ナトリウム Sodium Valproate (先発医薬品名:デパケン、セレニカ) |
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ラモトリギン Lamotrigine (先発医薬品名:ラミクタール) |
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カルバマゼピン Carbamazepine (先発医薬品名:テグレトール) |
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レベチラセタム Levetiracetam (先発医薬品名:イーケプラ) |
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●バルビツール酸系
フェノバルビタール Phenobarbital (先発医薬品名:フェノバール) |
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●フェニトイン系
エトトイン Ethotoin (先発医薬品名:アクセノン) |
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フェニトイン Phenytoin (先発医薬品名:アレビアチン、ヒダントール) |
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●オキサゾリジン系
エトスクシミド Ethosuximide (先発医薬品名:ザロンチン、エピレオプチマル) |
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トリメタジオン Trimethadione (先発医薬品名:ミノアレ) |
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●その他
アセチルフェネトライド Acetylpheneturide (先発医薬品名:クランポール) |
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ガパペンチン Gabapentin (先発医薬品名:ガアペン) |
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クロナゼパム Clonazepam (先発医薬品名:ランドセン、リボトリール) |
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クロバザム Clobazam (先発医薬品名:マイスタン) |
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臭化カリウム Potassium Bromide |
KBr |
ジアゼパム Diazepam (先発医薬品名:ホリゾン) |
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スチリペントール Stiripentol (先発医薬品名:ディアコミット) |
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スルチアム Sultiame (先発医薬品名:オスポロット) |
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ゾニサミド Zonisamide (先発医薬品名:エクセグラン) |
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トピラマート Topiramate (先発医薬品名:トピナ) |
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ビガバトリン Vigabatrin (先発医薬品名:サブリル) |
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プリミドン Primidone |
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ペランパネル水和物 Perampanel Hydrate (先発医薬品名:フィコンパ) |
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ミダゾラム Midazolam (先発医薬品名:ミダフレッサ) |
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ラコサミド Lacosamide (先発医薬品名:ビムパット) |
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ルフィナミド Rufinamide (先発医薬品名:イノベロン) |
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参考文献
・Cecilie U Johannessen Neurochem Int, 37: 103-110, 2000
・デパケン錠 インタビューフォーム
・ラミクタール錠 インタビューフォーム
・イーケプラ錠 インタビューフォーム
・テグレトール錠 インタビューフォーム
・アレビアチン注 インタビューフォーム
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